新規開拓営業とは売れる仕掛け作りの作業です

偉大な発明や発見が、研究室や実験室ではなく、実は散歩中などのリラックスしている時に生まれることが多い、という事実は、よく知られています。
あまり張りつめてばかりいないで、少し休憩しましょう。
■ レクサスの苦戦(2006.3.15)

トヨタが鳴り物入りで立ち上げたプレミアムブランド「レクサス」の苦戦が伝えられています。昨年は、初年度の目標として掲げた2万台の約半分の実績に終わり、またその内訳も、既存ユーザの代替が主体だったようです。このサイトのテーマでもある新規開拓、あるいはライバルからのウィンバックという視点からは、残念ながら成功しているとは言えないようです。

「買いに来ていただく」という販売スタイルを掲げ、ショールームに一流画家の絵を飾ったり、あるいはゼネラルマネージャー(店長)に高級ホテルのサービスを体験させる、といった“努力”をすることが、決して悪いとは思いません。しかし、もしそのような施策が営業戦略の柱だったとすれば(そのようなことはないと思いますが)、若干の違和感を覚えてしまいます。なぜなら、それは単に枝葉の演出に過ぎず、「レクサスを選ぶ理由」にはならないからです。

高級車を購入する人たちは、別に豪華なショールームでホテルのような接客を受けたいわけではありません(結果として、そうであったとしても)。また、車の品質も実はそれほど重要ではありません。

そもそも、プレミアムカーというのは趣味の世界のものであって、単なる移動の手段としての車とは、まったく異なるジャンルの商品です。その購買動機は、多くの場合、論理的な思考に基づくものではありません。しかし、トヨタの営業戦略は、情緒を論理で解き明かそうとしているように思えてならないのです。

いわゆるブランド製品に例えると分かりやすいのですが、原価がそれほどかかっているとは思えないただのナイロン製のバッグに、あたり前のように数万円のお金を払う人々がいます。それは論理的に考えると甚だ理解しがたい行為に映ります。でも、人間心理とはそういうものなのです。BMWがロールスロイス・ブランドを、フォルクスワーゲンがベントレー・ブランドを手に入れた理由は、まさにそこにあります。

確かに、日本車が世界で最高の品質を持っていることは誰もが認める事実ですが、「ただのナイロン製品」を5万円で売ることができるようなブランドイメージは、持っているでしょうか。
残念ながら、その高級セダンはメルセデスに乗れない人の、クーペはBMWを買えない人の、GTはポルシェに手が届かない人の、そしてスポーツカーは、本でしかフェラーリに会えない人のための車、というイメージが定着してはいないでしょうか。

とすれば、プレミアムブランドの立ち上げに際しては、絵を飾るより先にやるべきことがありはしないでしょうか。その肝心な点が抜け落ちているように思えてなりません。